聖男子マリア様 番外編  俺様天使奔走中につき
「言いたいこと、ワシにもあるのか?」

「今のところはない」


「そうか、『今のところは』か。んじゃ、『言いたくなったら』聞いてやるから、遠慮なく言えばええ」


ジジィ、完全に自分を下に見ているな。


「精神的にはワシのほうが上だからの」


いつか絶対法務省に送ってやる。



「まぁ、いい。とにかく、悪魔が絡んでいるなら、それはそれで地獄に行きやすくなるわけだからな。これはある意味、幸運と捉えるべきかもしれない。さて……そうこう言ううちに、歓迎会の準備が整ったようだ」


ザワリとひと際大きく森の木々たちがざわめいた。


その合間を縫うように一陣の風が駆け、生ぬるいなんとも言えない気持ち悪い感触を伴ったものが髪を揺らし、頬を撫でていく。


マリアも、そしてジジィも森の先をじっと見つめていた。


恐れるほどのものではないにしろ。
嫌な気配だけはする。


圧迫感があるというのか。
高圧的とでもいうのか。


一言で切り捨ててしまうとすれば、とにかく鬱陶しい。


ねっとりとべとつくような視線が木々の間を縫って、いくつもある。


瘴気をまとった森の住人たちが、取り囲むようにしてそこらの木々の枝という枝に腰をおろしている。


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