聖男子マリア様 番外編  俺様天使奔走中につき
「本当に……鬱陶しいな」


ジロジロとなめまわすかのような視線にうんざりする。

これは一掃すべきだな。


「おい、マリア」


人差し指を立て、クィクィッとマリアを呼び寄せるように動かして見せる。

マリアは「仕方ないわね」とため息をつくと、胸の前で手を組み、その場に跪いた。


「我は望む。父なる主の御剣を。父なる主の御楯を」


そしてゆっくり瞳を閉じたマリアは、胸の前で十字を切る。


「アーメン」


その瞬間、自分の足元から七色の光が出現し、それらはグルリグルリと自分の体を這い上っていく。


光が走り去る部分から、熱い力がさかのぼってくる。


鳥肌がたつような、そんな期待にも満ちた何かが、自分の胸の内から湧きおこる。



「上出来だな」


ニヤリ。
笑ってみせる自分にマリアはため息をついた。


「このやり方を教えてやりたいわ、あの子に……」


「楽しみを取り上げるな」

「分かってるわよ」


背中にじんわりとした熱が広がる。

内側から皮膚を破るように力強く生えてくるのは、自分の自慢の純白の翼。
< 42 / 129 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop