聖男子マリア様 番外編  俺様天使奔走中につき
自分たちの半径5メートルほどを焼き尽くしていた。

もちろん、影の姿などないし。

取り囲んでいた木々も根こそぎ焼きつくしている。



森の中に小さな丸い平地ができてしまった。



「法務省の管理官に怒られないかしら?」

「不浄物をよく処理したと褒められると思うがな」

「やりすぎじゃよ」

「これが『役職付き』の力だ。よく分かったのではないか? おいっ。そろそろ傍観してないで、出てこい。眺められるのは気分が悪い」


その言葉に反応するように、奥から一人、ゆっくりとこちらに向かってくる。


漆黒の地面につくほど長い髪は絹のように細く、歩くたびに小さく揺れる。
肌は反対に雪のように白く、その上に咲く唇はバラの花のように匂い立つかのように赤い。
ほっそりとした体つきであるにも関わらず、出ているところはしっかり出ている。

そうだな。
アイツがこの女を例えるとするのなら、見たこともないような絶世の美女。
見た瞬間に卒倒することだろう。

つくづくこの場にアイツがいなくてよかったな。



「天使には……無礼者が多いわね」


真っ赤な唇が開き、ドスの聞いた低い声が流れた。


瞳を閉じたままなのに、女はまっすぐ、間違えることもなく自分の前にやってくる。


シフォンの布地のドレスに身を包んだ女は、閉じたままの瞳を自分のものに重ねるように見つめてきた。



「片翼とは……堕ちた天使の弟らしい出で立ちね」
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