聖男子マリア様 番外編  俺様天使奔走中につき
「時間がない。条件を飲むと言ったのだ、早くしろ」

余分な一言は無視に限る。

アラダは小さくため息をつくと「雫は『純粋なる魂の涙』から生まれる」と言った。


「なんだ、それは?」

「愛する者を……ひたすらに思う心から生まれる涙が『命の雫』となり得るの。そして、今、おまえたちの願いをかなえられる雫を持つ可能性のある輩は一人。地の底にいる」

地の底?
地獄ということか?

しかも一人だけ?

地獄に落ちた輩で『純粋なる魂』などあるわけがない。

だいたい、『純粋』でないから『地獄』にいるのだろうが。

そんな輩がいるわけがない。


『特殊』な『理由』がない限り。


そのときだった。

「ミカエル。もしかして……先生のことなんじゃ?」

マリアが横から口を挟んだ。


先生?

アレが助けたいと願った魂のことか?


そう言われれば、確かに適合はする。
『特殊』な『理由』にも納得だ。

純粋でありながら、『悪魔』の手にかかったことで『天』に行けなかった。

ということなのだったらな。


だが、それなら一石二鳥。
願ったり叶ったりだ。


どのみち、それを助けるために地獄には行くつもりだったのだ。
それが結果的にアレを助けることになるのなら。


「嬉しそうね」

アラダの言葉に、ニヤリと意地悪く笑って見せた。
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