聖男子マリア様 番外編  俺様天使奔走中につき
「この先というと……煉獄か」


呟いた声に、ネビロスは不満げに「そうだ」と言った。



「ご主人とおまえらの戦いで、地獄から天へと通じる道が開かれ、罪の許された輩はそっちへ行った。おまえらの出来そこないのマリアによって死んだヤツが、最後の最後で道を作ったんだよ。急いでその道を塞ぎに行った時、ヤツはまだそこにいて動かなかった」


案外おしゃべりなヤツだな。

『ウリエル』の名前の効果かもしれない。

あいつも多少は使えるらしい。


「なぜ、行かなかったのか、聞いたのか?」


首を持ち上げ、自分の目の前に持ってくると、ネビロスは小さくため息を付き「無論だ」と答えた。


「煉獄にいるほとんどのやつらがそっちになだれ込んだのに、なぜチャンスをわざわざ無駄にしたのか気にならないヤツがいると思うか?」

「どうでもいいが、時間がないから早く言え」


ネビロスは唇をきゅっと噛んだ後、また観念したかのように話し始めた。


「償う罪が残っているからだとさ」

「償う罪?」

などあったか?


煉獄にいるならば、それほど大きな罪ではないと思う。


地獄へ至るほどの罪はないが、すぐに天国に行けない魂が、その小さき罪を清めるために向かう場所が煉獄。


話を聞く限りでは、それほど罪があるようには思えないし、なにより真面目な性格だったらしいから、罪を清めることも前向きに取り組んでいたのではないのか?


それなのに、いまだ煉獄に残る理由が見えてこない。
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