聖男子マリア様 番外編  俺様天使奔走中につき
苦しんでいるアイツを一刻も早く救ってやりたい。


そしてアイツの笑顔を見なければ!!


そのためだったら、なんでもする。


プライドだの、地べたを這うだの、そんなものどうにでもなればいい。



「ミカエル、上っ!!」


突如、マリアの叫び声が響き渡った。


言われる方向を見ようとした時、ズシリと背中に何かが乗ったかと思うと、容赦なく押しつぶしてきた。


「ぐっ……!!」


歯を食いしばり、叫び声を上げることだけはなんとか回避したものの、上に乗る何かは力を緩めることなく、地面へと力を込め続けている。


「無様だなぁ、片翼の天使? 隊長がやられたらしいことを聞きつけてみれば、天使の身でありながら膝をついて地面に這いつくばってやがる。ナメてんだなぁ、おまえ。ここは煉獄といえど、地獄であることは変わらないんだぜぇ」



ざらざらとした雑音混じりの声に、背後の主が誰であるかを理解した。



「アイぺロス……ネビロスの配下か」


ガチョウの頭と足に、ウサギの尻尾を持ったライオン姿のその悪魔は、地面に押しつけられる自分を愉快そうに笑っているだろう顔を耳元に近付けて「よくお分かりで」と言った。



「薄汚い顔を……近づけるな」



アイぺロスの足の爪が背中の翼に食い込んでいる。

そこが生温かな感触を伴い、じっとりと濡れているのが、はりつく上着から感じ取れる。



「こんな状況でも、口だけは減らないんだなぁ。黄金の天使は」
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