聖男子マリア様 番外編  俺様天使奔走中につき
開いた傷が静かに閉じていき。

血の跡はあとかたもなく、さっぱりと消えていく。


自慢の金色の髪がふわりと宙を舞い、背中がじんわりと熱を帯びる。



『んじゃ、後は頼みます』


ニカッと白い歯を出して、テンシンは笑い。


笑ったその残像を残し、姿は光の粒子になって弾けて消えた。



シャボン玉が弾けたように。

淡い小さな虹を作って、その姿は目の前から消えてなくなった。



「待っていろ、テンシン」



グググッと背中の肌を突き破り、伸びるのは二枚の真珠色の翼。



バサリッと大きく音を立てて広げた翼から、いくつもの羽が抜け、舞い落ちた。



金色の髪を両手で払うように肩へと落とし、くるりと体をそこに横たわる奇獣に向ける。




「こうなったら私は強いぞ?」



にこりと微笑みながらそう告げる。



もはや、自分に敵はない。
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