聖男子マリア様 番外編  俺様天使奔走中につき
「人を思いやる心を持たない冷酷非道な役職付きだと聞いていたのだけれど。どこかで聞き間違えたかしら? それとも相手を間違えたのかしらね?」


そう言って、アラダは首をひねった。



『思いやる心』を持たない『冷酷非道』な『役職付き』。



明らかに相手を間違えたな。



いや、昔の自分ならあり得ることかもしれない。



他人に興味もなかったし。
他人の心など、それよりももっと興味がなかった。


目の前の事実だけがすべて。
目の前の事象だけがすべて。


でも、今はなんとなくそうではない気もするのだ。



アイツの言う『思いやりを持たないと』の意味は深く、それはまだよく分からないし、難しい。

相手を思いやる?

どうしたら、それができるのか、今は試行錯誤の段階だと言うのに。



チッ。
面倒だな。


頭が痛い。



でも分かっている。



ガブリエルがなぜ自分を差し向けたのか、その意図さえも分かるだけに本当に頭が痛い。
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