聖男子マリア様 番外編  俺様天使奔走中につき
「この……大バカ者が!!」


飛んでくる鞭をむんずと掴み、引き寄せる。

バランスを崩し、自分の元によろめいたアラダの頬に容赦なく平手打ちを見舞った。


そして、そのあと、ギュッと力いっぱいアラダの体を抱きしめた。



「な……」



あまりのことに驚いたように、その場の全員が息を飲むのが分かった。



「おまえの気持ちは分かる。ずっとずっと一人で暗い深淵に立っていたのだろう? そして、そんなおまえに悪魔は甘い囁きをしたのだろう。だが……それは偽りだ。幻だ。実態のない影でしかないのだ。それは分かっているのだろう?」



今日はいつになく饒舌だ。


ガブリエルが乗り移っているのだろうか?



「過去に囚われるな。現実から逃げるな。未来を捨てるな。おまえは前を向け。自分をもう許してやれ」


そう。
これは自分に向けた言葉でもある。


ガブリエルは分かっていて自分に託したのだ。


同じ痛みを抱える自分になら、この女を救うことができるとそこまでも計算していたに違いない。



アイツならやりかねない。
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