聖男子マリア様 番外編  俺様天使奔走中につき
「ガブリエル!?」


純白の翼をばさりと一度だけ舞わせると、そのままきれいに折りたたむ。


そして、自分とヨハネを交互に見てにっこりとほほ笑むと。



「内輪もめなんかしている場合じゃないでしょう? 特にミカちゃん。周り、見えてなさすぎだよ」


言いながら、ガブリエルは後方をクイッと顎で指してみせた。


振り返ったその先にアスタロスが立っていた。


失った右腕をかばうように左手で押さえ、それでもギラギラとした憎悪の目でこちらを睨みつけていた。


「ボクが彼なら、漁夫の利狙って二人とも瞬殺しちゃうけどねぇ」


口調は軽いのに、言っていることは相当キツい。


ガブリエルはそう言って、にっこりと笑う。


「ああ、でも残念だったね、アスタロス。ここはあなたにも引いてもらうよ。あなたもここで無駄に命を落としたくないでしょ?」


そう言って、今度はアスタロスのほうに顔を向ける。


「やるって言うんなら、ボクは遠慮なくやらせていただきますよ。分かってるとは思いますがミカちゃんみたいに、ボクは優しくないですよ」


にやり……見ているこちらが寒くなるような笑みをガブリエルは浮かべる。


普段のコイツは絶対にこんな顔を人前では見せない。
これがコイツの本当の顔。


本人は「そんなことないよ~」などと言いはするけれど……




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