聖男子マリア様 番外編  俺様天使奔走中につき
ラファエルはそう言うと、また懐から今度は同じ仕様の紙を2枚手渡してきた。


それは主への申請書だった。

内容は『悪魔の犠牲になった哀れなる魂の救済』についてだった。


「回答はあったのか?」


申請書をラファエルに返しながら問うと「だから来たのですよ」と答えた。

それから後ろに控えるオダケンとたつろうに向き直り、にっこりと。
目元だけがほころばない笑みを湛えて見せた。


「小田賢治。ならびにたつろう。主になり代わり、主の御言葉を伝える。心して聞きなさい」


ラファエルの言葉にオダケンの背筋がピッとまっすぐになり、たつろうはその脇にお座りをし、ラファエルを見上げていた。


「罪なき魂を無理やりに穢され、地獄へとその身を落とすことになった。また、地獄にて手を差し伸べることもできず、さらなる苦行を強いることになったことを心より詫びる。
 
二人の魂に再び光在れ」



聞いている本人たちは茫然としていた。


ま、そうなるだろうな。


例えるなら、ある企業の会長職が一般平社員に辛い思いをさせたと謝っているのだから。




だが、おそらく最後の言葉の意味が理解できていないのだと思う。


それを理解したらしいラファエルはまたにっこりとほほ笑んだ。



「あなた方の寿命が尽きるその日まで、人として、飼い犬として、生を全うするように。
そういう意味ですよ」


回りくどい言い方だと思う。

もっと平たく言えばいい。
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