聖男子マリア様 番外編  俺様天使奔走中につき
ラファエルは素早くオダケンの頭の下にグラスを差し入れた。


そこに一滴、オダケンのこぼした涙が垂れて。


グラスに入った瞬間に、シュワッと音を立てる。


「これでいい」


深い海のように青く冴えわたった水の入ったグラスをラファエルは差し出した。


「これを持っていき、マリアに飲ませてあげるといいですよ」


そのグラスを受け取れずにいた。

ラファエルという男は、自分が人の世界に降臨することを最後の最後まで反対し。

マリアという存在のことも「許容できない」と否定したヤツだった。


なのに、今、コイツはマリアを認めるような発言をした。



それが解せない。



ラファエルはガブリエルとは違った意味で計算高い。

何か目論見なくして、こんな態度をとるはずがないのだ。



「誤解を解かないとならないと言ったでしょう?」


そう言うと、自分の手を取りグラスを握らせた。


「ラファエル」


すると、ラファエルは小さくため息をついた。
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