百物語骨董店
昔 美しい男に魅了された金持ちの娘がいた

娘はどうしてもその男の気がひきたかった

彼女はその街一番の仕立て屋に頼んで

彼女をその街一番に魅せる服を注文した

真っ白いビロード生地のワンピースだ

町中の娘達が彼女を羨んだ

ただ、

美しい男は彼女に見向きもしない


彼女は毎日男の元へ通った

晴れの日も曇りの日も
雨の日も

嵐の日も

必ず男の家の前に立った

時折窓辺に立つ
男の姿を一目みたかったから


彼女は恋焦がれた

来る日も明くる日も


ある日彼女は熱に浮かされたように狂い死んだ


恐ろしいのは

その街の娘達

死んだ彼女の体から身ぐるみはいで

ワンピースは他の娘の元に渡る

真っ白いビロードはまるで純白な私の心のよう


しかし

それを着て男の元へ行くと必ず娘は死んだ

赤い 赤い血はワンピースを黒く染めていく


< 15 / 81 >

この作品をシェア

pagetop