百物語骨董店
今日もこんなに遅くなってしまった
同じ電車を降りたのはみんなクタクタに疲れたサラリーマンばかりだ
「はやく帰ろ」
改札を出ると私はいつもの道を急いだ
右に曲がると商店街があるが
さすがに夜遅いので
シャッターがおりていない店は少ない
この辺は人通りが少ないので
いつも私はこの商店街を通る
ほとんど人はいないが、明るいのが ほっ とする
商店街の真ん中ほどに、「クローゼット」というブティックがあるのだが
そこの脇の小道に入るのが私の住むアパートへの近道だ
「…?」
あれ?道がなくなっている…
いつの間にかそこはアンティーク調の店でふさがれていた
「どうなってんの?!今朝はなかったのに…」
呆然として立ち尽くしたが
ふと
ショーウィンドウにディスプレイしてあるトルソーが目に入った
チャコールグレーのワンピースだ
どうやら店の雰囲気とおなじくアンティークのもののようだ
ビロードの生地だろうか
少し光沢がある
シフォンの袖に背中には大きなリボンのモチーフ