百物語骨董店
黒い猫の置物


置物といっても陶器ではなく

黒いビロード布が貼りつけられていて

瞳には猫の目のような金色と黒の石がはめこまれている

瞳に吸い込まれそうだ

そっと


そっと


手のひらにのせてみる

今にも動き出しそうな


「その瞳は虎目石ですよ」


振り向くと


店の奥の古ぼけたソファに


まるで女の人のように綺麗な


男の人が 居た


白い肌に漆黒の髪
ほんのりと赤い唇


ただ瞳が猫の置物と同じよう

吸い込まれそうな




あぁ、あの人を見ていると喉が渇く


喉が…

「僕、これが欲しいです。いくらするんでしょうか」


タケルは自分でも驚いていた


ものすごく今
この黒い猫がほしい

こういうの

喉から手が出るほどって言うんだっけ


「子供といっても」

店主の瞳はタケルの瞳を貫く

「容赦できませんがそれでもよろしいので?」

フランス人形がクスクス笑ったような気がした


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