百物語骨董店
それから

タケルは毎日


黒い猫の置物をポケットに入れていた


お母ちゃんには


知らない人にものを
もらっちゃ駄目だよ

って言われてたから


内緒にしてた


でもまぁお母ちゃんは
1人で僕を育てる為に
朝から晩まで
働いていて


あまり家にはいないし
僕と顔をあわす
時間も少ない


多分
気付かない



今日は
雨が降っている


縁側の窓をあけて
茶の間から
土の匂いがたちのぼる
庭を
ぼーっと眺める


学校から帰ると
ちゃぶ台に
おせんべいが置いてあった


おやつ に
ということだろう


タケルは
ポケットから
黒い猫を取り出して

ちゃぶ台に


コトリ と


置いた


「そうだ
お母ちゃんって呼ぼう」

お母ちゃん、なら
名前じゃない


「お母ちゃん、
あのね…今日ね、」


タケルは
堰を切ったように
今日の出来事を
猫に話した


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