百物語骨董店
タケルの部屋から
話し声が
聞こえる


「友達が
きているのかしら…」



「お母ちゃん
僕、お母ちゃんと遊園地に行きたいな」



思わず返事をしそうに
なったが




オカアサンモ
タケルトイッショニ
イキタイワ




…今のは

私じゃない


私じゃない!


返事をしたのは
私じゃない!



「タケル!」


ドアを
勢いよく開けた


タケルが
驚いて
目を丸くして
振り向いている


タケルの他には
…誰もいない



「タケル…
今誰かと話してなかった?」


なぜか
タケルの顔が
強張る


「お母ちゃん、あのね」


タケルのまわりを見回すと


タケルの手に
小さな黒い猫の人形が
握り締められていた



「タケル、それ
どうしたの」


「お母ちゃんあのね、
この猫喋るんだ」


タケル…
私が放っておいたから



寂しくて


寂しくて

…サビシクテ

< 28 / 81 >

この作品をシェア

pagetop