百物語骨董店
タケルは
ずぶ濡れになりながら


胸に黒い猫を
握り締めて


母もまた
ずぶ濡れになりながら



胸の中で
タケルの名前を
呼び続けながら


タケルの足に
追いつけない



気付かないうちに
タケルがこんなにも

足が速くなっていたなんて


タケル
ごめんなさい


タケル 戻ってきて



その時



前を走るタケルは
道路に飛び出した




右側から車が


猛スピードで走る
車が




「タケル!」


息をのんだ


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