百物語骨董店
4丁目の角に



最近妙な店が
できたという



友人の智子が
昨日の晩


その店の灯がついていた興奮気味に
言っていた



中には
古びたアンティーク調の品物たち



正直いって、智子にとってあまり
魅力的なものはなかったが


その奥


店の奥の奥に



人がいた



とても美しい男


店主だろうか


陶器のような白い肌
色素の薄い瞳
赤い唇
濡れたような漆黒の髪


店主の目線が、
ゆっくりと動く


窓から覗きこんでいた
智子と


ふと
目があった


フッと店主が笑う



その 瞬間



店の灯りが
突然消えうせ



店はひっそりと
人のいる気配もない



「真美も見に行ってみて!あんなに素敵な人、見たことないんだから!」


智子は熱にうかされたように

夢見心地で
私に言ったのだ


その日から
智子は本当に高熱を出して寝込んでしまった


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