百物語骨董店
その店は
見た目よりも広くて
可愛らしい店だった


グレーの素敵な
ワンピース


金細工の小物入れ


少しボロボロの
虎目石のはめ込まれた
黒い猫の置物



店の中央には重厚な
アンティークの猫足テーブル



ティーポットから
アールグレイのいい香りがしている



ブロンドのお人形が


その金色に光る
髪をなびかせて
私を誘う



思わず
手をのばした




「おや、お客様でしたね」





ふと


声がした方に
顔をあげた



濡れたように
漆黒の髪


透き通るような肌


ほんのりと紅い





美しい…人…




痺れるような声が



私の脳内を独占する



「ガトーショコラを焼きましたので
あなた様もいかがですか?」




フフ…と店主が微笑む



「可愛らしい女の子にはショコラが似合う」

…フフフ
お人形が振り向く

片方の瞳が
ない顔で

< 43 / 81 >

この作品をシェア

pagetop