百物語骨董店
「その約束がまだ何かも聞いていないのに?」

店主は言った

「まぁいいでしょう。」
ほんのりと赤い唇が少し笑う

「売って頂けるのですか!?」

このドレスが私のものになるなんて

その為だったら何でもできる

「いくらで売っていただけるのでしょうか」

店主はキラキラ光る瞳が印象的なフランス人形を抱き上げて言った

「お代はけっこうです。ただワンピースを再び引き取る事になる時は、それに相応する金額をお支払い頂きます」


そんなこと絶対にない


こんなに素敵なワンピースが自分のものになる

絶対に返すことなんてない

「わかりました。約束事を教えてください」

―――――――――

そうしてそれは私のものになった

ワンピースの包みを受け取って

私は振り返ることなく店の扉を押した

チリンチリン

「ありがとうございました。また、ご贔屓に」

店主の腕の中の

フランス人形が微笑んだ


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