百物語骨董店
あれ?

起床した私は台所横の玄関で立ちつくした

玄関は一段低くなっていてコンクリートのうちっぱなしになっているが

そのコンクリートがぐっしょりと濡れていた


水漏れでもしてるのだろうか。修理を頼まなければ

今日はオフ。彼氏の優と約束している

もちろん

着るものは決めている

あのワンピースだ

私は包みを開き早速袖を通す
ん、少しキツいかな…。
ジップをあげて鏡の前に立つ

これが私…

たかがワンピースを着ただけでこんなに素敵に変身できるなんて
私は鏡の中の自分にうっとりとする

優、なんて言うだろう

いや、その前に昨日の店主

あんなに素敵な人だって、今の私には一目惚れしてしまうかもしれない
黒い髪、白い肌、細くて長い指、濡れたような唇
今も目の前にいるかのように思い出せる



もう一度会いたい


あの人にもう一度会いたい


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