沈黙の華
僕からオレへ

19の春、まだあの時オレはオレではなかった。

まだ「僕」であった。

大学受験に失敗し、

何も目標がなくなった僕は

近所の喫茶店でアルバイトを始めた。

そこは年がら年中バイトの募集の張り紙があり、

それほど人を必要としているのかといってみたのがきっかけだった。

無気力な僕でも雇うほど

その店は人を求めていた。

その店の二階は僕の住む地域を仕切る

任侠の世界の方々のお住まいがあり、

そのおかげで喫茶店の利用者は

ほとんどそちらの世界の方々だった。

そちらの世界の方々を怖れる人達はなかなか喫茶店にやってこなかったが

喫茶店はそちらの世界の方々のおかげでむしろ赤字からは程遠かった。

僕はそちらの世界の方々の存在をしったが、

すぐに目の前に時給1500円をちらつかされて

そこで働き続けることにした。

そしていつの間にか3年がたっていた。

僕が喫茶店「あっぷりけ」に勤めから。

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