沈黙の華
アップリケで仕事を始めてから3年目の春

日曜日の開店前のドアの前にココア様はいた。

なんだか深刻な顔だったので

僕は「おはようございます」とだけ声をかけ、

すぐに席へ案内した。

指定席に座って彼はいつものオーダーをした。

その日はまだ店長が来ていなかったので、

僕がフルーツサンドとココアを造ってお出しした。

僕が伝票さしに伝票を置いて席を離れようとすると、

ココア様が口を開いた。

「お前の世界は何色だ?」


あの日からだ。僕が僕を捨て、オレになったのは。

あの日から15年がたっていた。

そして15年たつと僕はオレになり、オレはココア様のポジションになっていた。

オレはもうアップリケでは働いていない。

オレはアップリケの二階にいる。

そう、入ることはないと思っていた

オレにとっての「ひよこ組」

改め「龍真会」の若として

今オレは生きている。
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