Mafia〜兄妹を越えた真実(ホント)の約束〜
剛は何度目かのコールでやっと電話に出た。
「あ、麻里だけど…ごめんな…」
「浮気した奴が堂々とかけてくるなんていい度胸してんな」
あたしの謝りも聞かずに低く冷たい声が全身を凍らせた。
「ち、違う。お兄ちゃんが刺されて危なかったの。信じて!ニュースや新聞でも報道していたはずよ」
「フン!そんなの知らねぇな。俺がどれだけ捜し回ったか分かるか?お前が携帯持って行ってないことも知ってたよ。ピンクのセーターと黒いスカート履いて誰に会っていたんだ?」
「え……?どうして服装まで知ってるの」
受話器の向こうから甲高い声で笑う剛は既に何かに取り付かれた生き霊の様に思えた。
「浴室、鍵開いてたぜ。物騒な世の中なんだから戸締まりはしっかりしなきゃな」
「家に入ったの?それって立派な犯罪よ」
もはや立っていることも出来ずにその場に座り込んだ。
「うるせー!お前が裏切るからだろうが!じゃあ何で俺がくれたネックレス机の中にあるんだよ!答えろよ!毎日付けてるんじゃねぇのか?」
「……そ、それは」
「まぁ、いいから玄関開けろよ。今家の前に居るんだよ」
家に……??
ゆっくりとカーテンの隙間から覗くと確かに剛が煙草片手に立っているのが見えた。