Mafia〜兄妹を越えた真実(ホント)の約束〜
「分かった。ニューヨークに行くわ。でも最後に我が儘言わせて」
「ハイ!!何でも言って下さい!!」
一也さんがあたしの肩を掴む。
あたしはお腹の赤ちゃんの写真を鞄から取り出し一也さんに見せた。
「こ、これ…親分と姉さんの子供っすか?」
一也さんは赤ちゃんの写真を食い入るように眺めた。
「今日病院に行って来たの。双子ちゃんだって」
「親分は知っているんですか?」
あたしは首を横に振る。
「帰ってきてからびっくりさせようと思ってね…。だからお願い、ニューヨークに発つ前に颯斗に会わせて。どうしてもお腹の赤ちゃんにパパを紹介したいの」
「……分かりました」
涙まみれの一也さんの顔は極道の顔ではなく、一人の人間としての顔だった。
極道にも涙がある。
みんながみんな血に飢えた野獣ではない。
みんな一也さんみたいな極道だったら小さな恨みから戦争がうまれることもないだろう。
平和主義国、日本は遠い昔沢山の命を国の為に捧げた。
莉奈のお爺ちゃんが言っていた。
”戦争は幸せを好物とする魔物”だと――…。
その意味が今になって分かるような気がした。
魔物に打ち勝つには信じるしかなかった。