Mafia〜兄妹を越えた真実(ホント)の約束〜
〜第五章〜 二人の時間
気が付けば高校生活最後の冬休みも残り僅かとなっていた。
「明けましておめでとう。麻里とこうして年が越せれたなんて夢みたいだ」
「それにしても広い部屋だね」
誕生日の再会からお兄ちゃんに会ったのは二ヶ月ぶりだった。
さすがに友達みたいにメールのやり取りは多くはなかったけど電話で毎日声を聞かせてくれた。
初めて入ったお兄ちゃんの部屋は広い和室に”宮滝組”と厳つい金の文字で書かれた紋章が嫌という程目に入った。
神棚には数本の刀が誇らしげに並んでいて時代劇で見かけるお代官様の部屋のようにも見えた。
「お兄ちゃん本当に一ヶ月間ここに泊まっていいの?」
「あぁ…どうぞ。親父の許可は得たからな。好きに使えよ」
にっこり笑うお兄ちゃんの背中に勢いよく飛び付き兄妹とは思えないこの光景に部屋の入口に立っていた舎弟の一人が”兄貴が羨ましいです”と笑った。
毎年この時期になると両親は日本にはいない。
海外との接点が多いお父さんの会社はお母さんと一緒にお得意先を訪問する為、一ヶ月は帰って来ないのだ。
日本を発つ時、今年こそはあたしも連れて行こうと説得されたがバイトがあると言う理由で何とか免れた。
莉奈の家に泊まる事があるかもとは伝えたがお兄ちゃんと会う事だけは何故か言えなかった。
あのお母さんの険しい表情が何度も脳裏に浮かび言おうとする口を塞いだからだった。