Mafia〜兄妹を越えた真実(ホント)の約束〜
「もしもし…お兄ちゃん?」
蚊の鳴くような声で呟く―。
「麻里?てか、兄ちゃんって分かってんだから、元気よく電話取れよ。まさか兄ちゃんの携帯登録してなかったんじゃねぇだろうな…」
受話器の奥から聞こえる相変わらず口煩い声に何となくホッとした。
あの日、”お兄ちゃんなんか大嫌い”って言っていじけたまま寝ちゃって朝の見送りの時も一言も喋らずに別れたから、ずっと気にはなっていた。
「どうしたの?あたし忙しいんだけど…」
本当は嬉しくてたまらないのに素直じゃないあたしは冷たく言い放した。
「仕事か?週末だけ店に出るんだろ。篤に聞いたよ。客引き上手いらしいやん。お前のファンクラブもあるんだろ?兄ちゃんは心配だけどな」
「そんなの知らないし。てか用件はそれだけ?」
「あぁ、いや今日な、兄弟いや篤とAngelで飲む事になってな、麻里がいるかなぁって思って」
え……??
今何て言ったの…??
Angelに来る…??
片手に持っていたグロスが絨毯の上に転がった。