いとしのかずん
「言われなくても、ちゃんとやるって」

「じゃ、おじさんにもお礼言っといてね」

敦美は、そう言うと右手でバイバイをして列車へと乗り込んでいった。

敦美を乗せた列車が、駅を離れていく。それをぼーっと見ながら、この数日間を思い出した。最初に会った時の衝撃が、たった数日前のことなのに、やけに昔のような気がする。あと2か月ぐらい、敦美に会いないのだと思うと、体がよじれそうだ。一緒にいるときは、そんなことは思わないものである。いなくなった時に、初めて湧き上がってくる気持ちもあるのだと思った。

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