いとしのかずん
「んじゃね」

駅の前に着くと、敦美はそう言ってこっちを向いた。敦美の通う大学へは、ここからJR線に乗る。俺の高校は、私鉄沿線なので、ここで別れるのだ。

「ああ、んじゃな……」

そう言って軽く右手を上げ、振り向いた。そして、数歩進んで、後ろを振り向いてみる。敦美の後姿が、だんだんと離れていった。

「ふぅ……」

肩にかばんを提げ、俺も振り向いて改札へ向かった。

「おい! 巧?」

電車に乗り込んだ俺に、後ろから声をかける男が1人。
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