いとしのかずん
「弟さんでいらっしゃいますか?」

「は?」

「いや、だから。敦美ちゃんの弟さんでいらっしゃいますか?」

「敦美……ちゃん?」

男の発した言葉は、てっきり脅されると思っていた俺の想像とはおよそかけ離れたものだった。
どうやら、男は敦美の知り合いのようだった。
俺の事を、敦美の弟と勘違いしている、らしい。

「いや……あの、弟じゃなくて、いとこ、ですけど」

「いとこさん、でらっしゃいますか、そうでしたかー」

そう言うと男は、俺の右手をとると、両手でぎゅっと握りしめた。
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