いとしのかずん
敦美があんな欲望の固まりのような男の毒牙にかかることは、なんとしても避けたい。

もちろん、相手がどんな好青年でも、その気持ちはかわらないのであるが……

「それよりさあ、巧この部屋に来るの、初めてだよね」

いろんな思いが頭の中で渦巻いていた俺、敦美の一言で我に返る。

「あ、ああ……そうだったけ。あ、でも引越しの時に来たぜ?」

「あ、そっか……」

「ま、あんときはきたね~部屋だったけどな」

「そうだったね、段ボールばっかだったもん。でも、綺麗にしたでしょ?」

そう、ほほ笑む敦美。
たしかに、白を基調としたインテリアに、ピンクやブルーなど、色とりどりの小物が並ぶ部屋は、いかにも若い女子の部屋っぽい。

今までに付き合った女性は、中学1年のときのさっちゃんから数えて全部で3人、でも女子の部屋に入ったことは、実はまだない俺。

いとことはいえ、初めて若い女性の部屋に入ったわけだ。
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