いとしのかずん

「とにかく、それ伝えなきゃと思っただけだから……んじゃ、俺、行くわ」


決して、居心地が悪いわけではない。
ただ、用もないのに、ここにずっといていいのかがわからなかった。


「あ、うん、ありがと……」


敦美が、俺のほうを見ているのか、それは確認できなかった。振り向いたり、また話しかけたりしたら、なにかわざとここにいる時間を引き延ばしているんじゃないかと思われるかもしれない。ここは、ただの報告だったのだということを暗にアピールするためにも一気に部屋を出きるべきだ、と思った。

――パタン

部屋のドアを優しく閉めて、ようやく後ろを振り返れた。

何も、余計な詮索をされるような発言はなかったか、自分の吐き出した言葉を改めて反芻し、チェックしてみた。


これからも、こんなかんじでいろいろと自分の一挙手一投足、敦美に自分の気持ちを悟られぬよう気を使っていたかくてはならないのだろうか。

――つかれそう……