いとしのかずん
「あ、ああ……」

そう返事をしてから、風呂に入ってないどころか、昨日から顔すらも洗ってないことを思い出す。顔面がテカテカになっているのが、鏡を見ずともわかる。もしかしたら、目ヤニとかよだれのあととか、そんな悲惨なことになっているかもしれない。こんな顔で敦美と会うのは嫌だなと思ったが、後の祭り。すでにドアは開かれ、敦美のシルエットは俺のすぐ横まで到達していた。

「巧、大丈夫?」

「あんま大丈夫じゃない」

なるべく敦美に顔を見せまいと、背を向けて横になったまま、そう答えた。

「そか……ご飯は、食べれそう?」

「うー、よくわからん」

「そか……ごめんね起こしちゃって……」

「うん……」
< 167 / 183 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop