いとしのかずん
目を閉じたまま、敦美が振り向いて部屋から出るオーラを背中に感じた。もう一度眠りにつこうかと思ったとき

「あのね巧、さっき、同級生の子がノート持って来たから、机置いとくね」

という敦美の声。

――同級生??

「え? 誰?」

「ええと、神崎まりあ、って書いてあるよ?」

――神崎……ああ、いたな、そんなやつ……なんか、連絡事項でもあんのかな……

同じクラスに、確かにその名前はある。とは言っても、特に仲がいいわけでもなく、むしろ会話をしない日のほうが、圧倒的に多い、いわゆる普通のクラスメイトである。とりたてて深く考えることもなく

「さんきゅ……」

とだけ言葉を返した。すると
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