いとしのかずん
放課後となり、あちらこちらの教室から、いすをひく音が聞こえてくる。
数日、休んでいたので、今日一日で連絡のプリントやら提出物やら、いやはやけっこうな量の書類を持ち帰ることとなった。そんなプリント物を整理していると

「おう、巧」

うしろから、山下が声をかけてきた。

「おう、山下」

「巧、お前さ、部活は、どうすんの?」

「うん、いちお行くけど、半分は見学かな……」

「そか、んじゃ、一緒に行くか?」

「ああ、そうだな、ちと待ってて」

そう山下につげ、机の上を整理していると、神崎から借りたノートが顔をあらわした。

――そっか、放課後、返しておくか……

「あのさ、山下」

「ん?」

「ちと、時間かかるっぽいから、やっぱ先いってて?」

「ん、そう? わかった」

山下の背中を見送り、教室をみわたすと、神崎の姿を発見した。
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