いとしのかずん
「はい! ……あ、巧、くん」

振り向いた彼女は、一瞬とまどったような、そしてちょっと照れてるような表情で、一度あった目を、瞬時にそらした。

「あのさ、ノート、どうもありがとう」

「あ、別に……学習委員会の仕事だし……」

「そか、だよね、でも助かったよ」

そういってノートを差し出すと、彼女は両手でうけとり、なにか大事なものでも取り戻したかのようなかんじで胸に抱いた。

「じゃあ、そういうことで」

「あ! 巧くん!」

「ん?」

「あの、もう……いいの? 体調」

「うーん、まだちと辛いかな……」

そうこたえる俺のバッグをちらっと見た彼女は

「でも、部活いくんでしょ?」

「まあ、半分見学みたいなもんだけど」

「そうなんだ……バドって、ハードなんでしょ?」

「ああ、まあね」

「試合、近いの?」

「そうね、来月かな」

「そか……来月なんだ……」


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