いとしのかずん
「おーい! まりあ~! 行くよ~」

教室の入口から、他のクラスの女子数人が、彼女に声をかけた。彼女はそちらに向かい


「うん、いまいく~」

というと、すかさずこちらを見た。

「じゃあ、お大事にね」

「……ああ、ありがと」

そそくさとノートをかばんに入れ、それを胸にだいて友人へと駆け寄る彼女の横顔を、それとなく見送る。その頬は、ちょっと上気しているようにも見えた。
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