いとしのかずん
どうやら、下宿の話はかなりの確率で実現しそうな予感だった。

もしも、敦美がこの家で暮らしたなら、常に一緒の空間にいたとしたら……なにかほっとしたような、うれしいような恥ずかしいような、わくわくするようなドキドキするような、何かいろんな気持ちが渦巻くような、欲望が盛り上がるような、なんとも複雑な心境。


「いやー、実は密かに期待してたんだよねー。でも、こっちから切り出すのも図々しいと思って。叔母ちゃんから言ってくれて助かったわー」

しかしそんな俺の気持ちなど想像しているはずもない敦美は、腰に手を当ててしてやったりの表情だ。

――コイツ…確信犯かよ…

「ま、そんなわけだから、春からよろしくね」

敦美は、そう言って俺の前を横切り、机に向かうと椅子を引いた。
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