いとしのかずん
「で……でも、四月になれば総体あるし……そんときは観に来れば?」

努めてさらっと誘うと

「そっか、四月なら、あたしここにいるから、観に行けるね!」

敦美はにっこりほほ笑んだ。


四月になれば、毎日敦美と一緒にいられるかもしれない。そう思うと、気持ちの高ぶりを抑えることができなくなりそうだった。

「来年かあ……あ、そういえばさあ、巧、来年受験だね」

ふと、思い出したように敦美はこちらを見た。

「あ、うん……」

「もう、志望校は決めた?」

「いや…まだ…」

「そか……どんな勉強してんの?」

そう言うと熱美は立ち上がり、机の上の本棚から参考書を手に取った。
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