いとしのかずん
「しっかし、懐かしいね巧。よく遊んだよねー」

参考書を戻した敦美は、さっきまで座っていた椅子ではなく、今度はベッドの柵に寄り掛かった。ベッドは、敦美の重さを受け止めてギシッとかすかに音をたてた。


敦美と俺の距離は、わずか30センチ。

それは、少し手を伸ばせば触れてしまいそうな距離だった。

「う…うん…そだな…よく遊んだな……」

俺は、更に平静を装おうと、神経を集中させるのに必死だった。しかし、そんな俺の気持ちなど察することもなく

「大きくなったもんだ、うん」

俺の頭をペシペシと、何度も叩く敦美。
< 33 / 183 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop