いとしのかずん
「あたしでよかったら、全然いーですよー! でも巧、頭いいんじゃないですか?」

敦美はそう言って俺を見るが、父は

「いや、あかんな。コイツにはなんや…向上心ていうか、欲がないねん。もっと常に上を目指すいう気持ちがないねんな」

とキッパリ言い捨て、首をひねりながらビールをぐいとやった。
その顔、すでに頬とおでこのあたりが若干ピンク色に染まりつつある。そういえば最近、父は酒を飲むとすぐ顔に出るなあ、とあらためて思う。どこか内臓でも疲れているのだろうか、などと漠然と考えてしまう。
< 42 / 183 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop