いとしのかずん
「おー、覚えてる!なんか森林公園みたいなとこだったよな!」

「そうそう! 巧、カゴに、これでもか!ってぐらいたくさん蝉入れたんだよねー」

「……そ、そうだっかな……あはは…」

俺は引きつり笑いをした。

「そうだよ。蝉の足とかとれちゃったりしてさあ……あっ! あとあのとき……ぷっ!」

そこまで話して敦美は何かを思いだしたらしく、吹き出した。

「ど…どしたの……」

「だってあのとき、巧さあー!」

敦美の笑いはさらに増した。その笑いに少し不気味さをおぼえ

「俺、なんかしたっけ……」

と、恐る恐るたずねる俺。
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