いとしのかずん
――ガバッ

「あ、あれ?? ……」

布団から起き上がり、思わず左右を見回す。

「やっと起きたか……ったく、よくそんだけ寝られるわねぇ…早く下に来なさいね?」

敦美は、そう言うと部屋を出ていった。

……あれ? 今の……もしかして…夢?

ベッドに座ったまま、しばし呆然とする俺。

……あんな夢…見るなんて…

俺の願望がもたらせた悪戯か……夢の終わりは、あっけなく俺を現実へとほっぽり出した。

思わず、自分の唇に触れてみる。

心なしか、敦美の唇の感触が残っているような気がした。
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