いとしのかずん
思わず、敦美の唇に目がいく。

薄いピンク色のその唇は、なめらかな曲線。
プルンとしていて、透き通るような光沢があった。

――あの唇……

さっきまでの夢を思い出し、再び妄想の世界をめぐらせ、ぼーっと呆ける俺。

「どしたの? 食べないの?」

すると、敦美はそんな俺の顔を見て、箸を加えながら小首をかしげた。

その愛くるしい表情に、俺は言葉を失う。


――なんか俺、完全にやられてんな……
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