いとしのかずん
駅前広場を抜けると、自動的に商店街へと吸い込まれてゆく。ここの商店街は、およそ500メートルに渡って、おそらく100を超える店が延々と続く。

年末ということもあり、通常よりもあきらかに人手は多く、真っ直ぐ歩くことさえままならない状態である。アーケードの中央を、人をよけつつ歩いてゆくと、左右あちらこちらから威勢のいい声が飛んでくる。海産物やらお餅やらの、いわゆる正月に向けての縁起物の匂いが漂っていた。

商店街を抜けると、やがて目の前に巨大なデパートが姿を現し、駅からの人の流れを丸ごと飲み込む。

俺と敦美も、その流れのままデパートへと吸いこまれていった。
< 69 / 183 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop