いとしのかずん
「ふぅ、すごい人だねー。さてと、まずはどこに行く? 巧」

敦美は、入口を入ったところにある吹き抜けのスペースで立ち止まり、俺を見た。

「そうだな、本屋かな」

「あ、あたしも行きたい! 何階?」

「えっと確か5階、だったかな」

「んじゃ5階行こう! えっと……あ、あっちか」

敦美は、左右を見渡し、エスカレーターを見つけると、そそくさとそちらのほうへ歩いていく。

「人、多いね」

「あ、ああ」

エスカレーターには、ほぼ全段に人が乗っている。俺は、横に並びたい気持ちをおさえつつ、敦美の乗る一つ下の段に乗った。
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