いとしのかずん
「なんか、食わねえ? 腹減った……」

本屋を出て、あてもなく歩く。俺はおなかに手をあてがいつつ敦美を見た。

「そだね……あたしも座りたいよ……」

敦美は本屋の紙袋を胸に抱いて、あたりを見渡した。

「あ、あそこだ…」

敦美は壁の案内板を見つけ、そこに歩み寄った。

「えと…なんにする? あたしコーヒー飲みたいな……」

「そだな……なら下に喫茶店があるけど、そこ行く?」

俺は、一階にある喫茶店を指差した。

「うん、そうしよう!」

敦美はそう言うと、エレベーターに近づきボタンを押した。
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