いとしのかずん

ゆっくりと、その固まりに近づく。すると、敦美が俺に気付いた。

「あ！　巧！」

敦美は、覆いかぶさっている男の背後からこちらに顔をのぞかせた。

「ん？　巧？」

同時に、敦美に詰め寄っていた男が振り向いた。男は、俺の顔を見て動きを止めた。

俺は、更にその男に近付く。

男は敦美から離れ、完全にこちらを向き、俺の前に立ちはだかった。敦美は、すっと壁際を離れ、俺の背後に隠れた。男は、俺の肩をグッとつかむ。そして次の瞬間、ニヤッと笑いながら言った。