それでも傍にいたい〜先生と生徒の逢瀬〜
久しぶりに屋上へ続く階段を上る。最後にこの階段に上ったのは卒業を控えた高三の冬。飛鳥達と寒空の下くだらない話をしたこと、今でも覚えている。

よく、章とも一緒に昼食を食べたっけ。章は決まって購買の焼きそばパンとサンドイッチにコーヒー。私はお母さんの手作りのお弁当。―懐かしいな。

「ミカ、今すごく優しい顔してる。」

屋上の鉄の扉を開いて、ジャスティンは言った。

「そう?」

「うん。きっと、屋上には楽しい思い出がいっぱいあるんだね。よかったら聞かせてよ。」

「ええ。でもくだらないことだよ?」

「くだらないことなんかないよ、だって君のその笑顔が素敵なことだって言ってる。」

「…ジャスティン。」

錆びたベンチに腰掛けて、私達はお昼ご飯を食べた。私のくだらない昔話を、ジャスティンは笑顔で聞いてくれた。その笑顔は、本当に穏やかな、優しいものだった。
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